ロボットカフェの実証実験がスタート

近い将来、カフェで接客する人がいなくなるかもしれない――。

現在、港区赤坂の「日本財団ビル」で、ロボットを使った実証実験が行われている。同ビル1階に期間限定で「AVATARカフェ(分身ロボットカフェ)DAWN ver.β(ドーン バージョン ベータ)」をオープンさせ、そこで実験的にロボットを働かせているのだ。

まるでSFの世界のような店内

同店は、「オリィ研究所」、「日本財団」、「ANA ホールディングス」の3社合同プロジェクト「DAWN ver.β」による取り組みの中でオープンしたカフェだ。このプロジェクトでは、障がいを抱えている人の就業サポートをはじめ、あらゆる人が社会に参加しやすいような環境づくりを推進しているという。

そのなかで今回は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者などの重度障がい者が、自宅から、カフェにある分身ロボット「OriHime-D」を遠隔操作して接客を行う、というのが主な取り組みとなる。「OriHime-D」の中には小型カメラとマイクが仕込まれているため、操作する側はカメラを通して客の顔を認識することができ、マイクを通して話をすることもできる。来店客は、「ロボットに話し掛ける」というよりも「カフェの店員に注文する」という、いたって普通のカフェにいるのと変わらない感覚を覚えるだろう。

「このプロジェクトは、これまでできなかったことができるようになるという点では、『SF』だと僕は考えています」こう話すのは、オリィ研究所所長の吉藤オリィ氏だ。

オリィ研究所所長の吉藤オリィ氏

吉藤氏が所長を務めるオリィ研究所は、これまでに、分身ロボット「OriHime」を開発し、難病児の遠隔教育やALSなど肢体不自由患者のコミュニケーション・就労支援機器としてロボットの活用を推進してきた。

また、合同でプロジェクトを進めている日本財団も、障がい者就労の環境改善を目指すプロジェクト「はたらくNIPPON!計画」を実施し、およそ30ものモデルとなる就労支援事業を開設したノウハウを提供してきた。そしてANA ホールディングスも、ロボティックスやVRなどを組み合わせた「AVATAR」技術を利用したサービスをこれまでに提供してきた。

3社が手を組むことによって、「働きたくても働けない」「外出したくても外出できない」「誰かと話したくても話すことができない」といった問題を抱える人たちに手を差し伸べることができるという。彼らにとって実現できなかったことが実現するということは、まさにSFの世界に通ずるものを感じる。

遠隔で操作する分身ロボット「OriHime」

また、吉藤氏は「『イヴの時間』とコラボすることで、SF感が伝わりやすくなっています」とも説明。実は今回のロボットカフェ、SF映画アニメ「イヴの時間」とコラボレーションした店作りとなっており、若い世代の人たちにもこのプロジェクトについて知ってほしいという願いを込めた。

オリィ所長は、今後のビジョンについても言及。「分身ロボットを活用することで、例えばセルフ介護ができる時代がやってくるかもしれません。今回のプロジェクトを通じて、そんな少し先の未来を感じとってもらいたいです」とコメントした。

世の中に今後こういった取り組みが増え、職の幅が広がると、「働き方」についてより考える人もきっと増えるだろう。自分は何ができるのか、何が自分にしかできないのか。改めて考えていきたい。

<店舗情報>
「AVATARカフェ DAWN ver.β」
住所:東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル1F
営業時間:13:00~17:00
定休日:土曜・日曜
アクセス:溜池山王駅9番出口、虎ノ門駅3番および11番出口、国会議事堂前駅3番出口、
それぞれ徒歩5分
オープン期間:12月7日まで

<関連リンク>
■日本財団 公式サイト
https://www.nippon-foundation.or.jp

■オリィ研究所 公式サイト
http://orylab.com

■「はたらくNIPPON! 計画」プロジェクト 公式サイト
http://hataraku-nippon.jp

■ANAグループ 公式サイト
https://www.ana.co.jp/group/

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